一房を分けて味わう葡萄かな

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 絵画教室のお仲間のYさんが、教室へ来る途中に通る家の前で、彼女の通るのをその家のご夫婦が待っていて、玄関前の葡萄棚からもいだ葡萄を下さったそうです。

 教室の皆で、お茶の時間にごちそうになりました。とても甘くて、個人の庭で採れたとは思えないほどです。

 ふと、有島武郎作「一房の葡萄」を思い出しました。主人公が女の先生から葡萄をもらうのですが、その先生の白い手を思うシーンが浮かんだのです。しかし何故葡萄をもらったのかとんと思い出せず、ネット検索しました。

 なんと舞台は横浜の山の手で外人さんの多い学校でした。先生は皆外人さんとあるから、私が思い描いていたより、先生の手はもっと白かったようです。

 内気な少年が、海の色や舟の色が自分の絵具では思う色が出せず、自分より大きな男の子の持っている外国製の絵具が欲しくてたまらず、誘惑に負けて2色失敬してしまいます。それがばれて、先生の元へ連れて行かれます。先生は他の生徒を帰して、少年の話を聞こうとしますが、彼は泣きじゃくり、やがて泣き疲れて寝てしまいます。目が覚めると先生は窓の外の葡萄を取って、少年に与えます。

 翌日、絵具の持ち主と共に先生の元に呼ばれて仲直りします。先生は又窓から身をのりだして葡萄を一房とって、その房をハサミで二つに分けて与えてくれました。

 中学校の教科書に載っていたのかもしれません。当時は東京の学校へ転校したばかりで、教科書の背景を思い描くことも無かったのでしょう。何故か、白い手に乗った

葡萄だけが印象に残りました。