若き日の妻を呼ぶ君雛の宵

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 五十ン年前佐渡の荒海をフェリーに揺られて渡り、主人の実家近くの宿に泊まったのが3月2日。翌日は町営の施設で結婚式を挙げました。昔に比べて簡略されたらしいものの、謡曲高砂や~この浦舟に帆を上げて~と親族の一人が朗々と唄いあげる厳かな式だったと覚えています。可愛らしい雄蝶雌蝶の注ぐ三三九度で杯を交わしました。

 

 あれから瞬く間に月日は流れ、互いの容貌も変わり果てました。主人は時折私に

「うちのお母さん、いつ帰って来るの?」などと言います。「母親ですか?奥さんですか?」と聞き返すとやや間を置いてにやりとする事も。

 

 今夜は「俺の母親と父親は二階にいるのか。」と聞きます。もう20年も前に亡くなりましたよ。といっても納得しません。お母さんは幾つ?と聞くと81才かなといいます。

つい吹き出して、「お父さんは今82才だから、生きていたら100才は越えるでしょう。」しばらくしてから、「母親も父親も生きているよ。」そうかそうか、そういうことにしておきましょう。