夏来ぬと歌集広げて尾瀬の歌

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 新人らしい若い綺麗な介護士さんに手を引かれて、主人は機嫌良く出かけていきました。改装して室内にカーペットを敷いていないので掃除がとても楽になりました。

時間が取れたので、読みかけの「おらおらでひとりいぐも」を手に取りました。

 

 夫の急死を乗り越えて行く過程が頭の中の幾人もの自分とのやりとりによって徐々に

自分に立ち帰っていくのが時にユーモラスで、一気に読み進みました。夫や子供に囲まれていた平和な主婦の生活も幸せであったが、自分一人の自立した自由な生活も手にして別の幸せにも目覚める主人公の老後が頼もしく思いました。

 

 つい対照的だった先日亡くなった友人に思いを馳せてしまいます。寺内貫太郎のようなご主人に仕えて、ご長男の会葬御礼の挨拶文の中に「・・・家の中を完璧にこなし・・・父の介護に尽力を注ぎ、いつの日も家族のために尽くしてくれた母に感謝の思いが尽きません。・・・・」長文の中の一文ですが私の目から見ても、本当に完璧な主婦でした。

 

 ご主人を家に残して外出は、月に一度の食事会のボランティアの集まりぐらいでした。ご主人を亡くされて、哀しみが癒えたら外へ連れ出そうと思っていたのですが、

もう余力は残っていなかったようです。ご主人の後を追ってしまいました。

 

 「おらおらで・・・」の作者若竹千佐子さんは、新日本婦人の会のお仲間と聞いて

親しみが増しました。63才の新人と言われて急に脚光を浴びてさぞ多忙な生活になってしまったことでしょう。ゆとり有る老後を送って頂きたいものです。

 

 デイケアから帰った主人のバッグには新しい歌集が入っていました。毎日毎日同じ歌を繰り返していましたが、今日からは違う歌が聞かれます。夕食の準備をしていると

「夏が来れば思い出す~♪」と歌い出しました。私も一緒に「遙かな尾瀬~」。